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村井和之/MURAI Kazuyuki
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テーラーメイドトラベル専門の旅行会社、株式会社コスモクラーツトラベル代表。細やかな気遣いと豊富な人脈や知識を必要とする、VIPのハンドリングに定評があり、日本、海外のVIPを多く顧客にもつ。みずからの旅の経験や視点、世界の人脈を駆使し、テレビ番組や雑誌の海外企画も担当している。


月別アーカイブ: 10月 2013

はじまりの七つ星

画像は、「ななつ星」の公式ホームページからお借りしました。

 JR九州が手がける豪華寝台列車「ななつ星」。いよいよ運行開始ですね〜。2年ほど前、上海のとある商談会で、JR九州のプロジェクト担当の方とお会いして、ご意見を求められちゃったので、まじめにコメントしたのを覚えています。「どんなに列車を豪華に作っても、旅は総合力だから・・・。ただ、九州だけをぐるっと回っても、無理矢理な感じがして、いかがなものなのでしょう?」と。もちろん、どん引きされましたが。それ以来、一切コンタクトがないの〜。
 ヨーロッパの国々を巡るオリエントエクスプレス、南アフリカの大地を駆け抜け、サファリも楽しめる「ロボスレイル」、シンガポールからバンコクまで、国境を超えるたびに風情が移り変わる「イースタンオリエンタル」、列車内で、マリアッジの演奏に合わせ、テキーラを飲みまくって大騒ぎなメキシコの「テキーラエクスプレス」、脱線事故起こしちゃって、評判下げちゃったけど、アルプスの大渓谷を眺めながら走る「氷河特急」など、世界にはダイナミックな列車の旅が数多くある訳ですが、この「ななつ星」、何を訴求したいのか、今ひとつ弱い感じがするのです。
 弊社の日本人のお客様は、まず「ななつ星」に乗る前に、乗ってみたい寝台列車は世界中にあるわけで、体力のあるうちに、まず遠くの寝台列車に乗りに行ってしまうと思うので、なかなかご縁がないかもしれません。じゃ、外国人VIPの方々に?弊社は、あまり時間のない外国のVIPたちが多いので、九州まで案内することが殆どないから、まだまだ時間がかかるという感じ。豪華な列車だからといっても、その列車に乗って何をするのかがないと、わざわざ九州に行ったりはしないでしょう。東京にステイして、真岡鐵道の蒸気機関車にのせて、益子で、作家たちの窯元巡りさせて、イチゴ狩りして、道の駅で「おとめミルク」なるとちおとめを使ったジェラートを食べさせて、日光東照宮を参拝し・・・栃木の酒蔵巡りして、佐野ラーメンなんか食べちゃったりして、帰ってくるなんてのが、某ハリウッドの俳優が感激してくれたり。特に真岡鐵道と関係あるわけじゃないんですが、東京から近くて、日本の里山の風景を見せられて、ちょっとローカル体験してもらうには、とっても便利な蒸気機関車なんです〜。そのハリウッド系の彼は、「のどかな農村の風景と蒸気機関車の汽笛が、胸を熱くするのだと」あたしに話してくれました。なんて、どんな風に魅力を切り取るのかという丁寧な作業が、日本のインバウンドビジネスには重要だと僕は思います。だって、ダイナミックさでは、海外には勝てないのですから。小さな風情をどんな風に案内し、誰がアテンドして楽しませるか。そんなことを丁寧に紡がなければ、海外の富裕層を満足させるのは難しいだろうな・・・というのが、6年この仕事をして思うことです。
 今まで、豪華寝台列車と言われた「カシオペア」でさえ、海外から予約を依頼されたことはなく・・・。今朝、「ななつ星」が、TBSの朝ズバで特集されたので、しっかり観てみましたが、僕には、「カシオペア」のお姉さん?って感じなのかな?と思えました。海外の富裕層というようりは、マーケットは、国内のお金持ちのシニア層なのでしょうね。豪華!高額!といっても、デラックススイートに泊まるプランの料金の多くを占めるのが、「天空の森」の宿泊費だったり・・・(それってどうなの??)ただ、そんな列車に乗ってみたい!ということで満足する層は国内に確実にいます。豪華寝台列車に乗り、がたごと揺れる列車の食堂車で食事をし、そんな時間を楽しみたい!と思う人が、メインターゲットなんだろうなあ。言い換えれば、ドメスティックなマーケティング?なのでしょうね。カシオペアの公共施設みたいな内装とは、別格というくらい風情ある内装なのですから。
 オリエントエクスプレスに乗ったときに、ディナータイムになれば、「あたしの身体がドレスですっ!」みたいな、背中のぱっくり開いた、エレガントで華やかなイブニングドレスを着てる女性やタキシードを身にまとった男性がグラスを傾けていたり、そこに乗り合わせた人々が、その列車の風情そのものなのよね。もちろん僕もタキシードを着たけど、僕が皆さんの雰囲気を壊してやいないかと気になって仕方なかったですう。例えるなら、「走る社交界」って感じね。それに引き換え、七つ星には、ドレスコードすらないじゃないかしらん?それに、富裕層、富裕層とメディアも連呼するなら、他の富裕層向け列車としっかり比較して報道してほしいものです。オリエントエクスプレスのことばっかり例に出しちゃうけど、例えば、客をアテンドするスチュワードのクオリティがずば抜けてるの!!!!どんな風にずば抜けているかを書くとすごーくながくなっちゃうので、それは改めて・・。テキーラエクスプレスも、ただの列車だけど、この列車のアテンダントたちは、とにかく、歌って、飲ませて、盛り上げる!!、すべての客を「楽しかった〜!!」と言わせるくらいの勢いなの!!
 日本のメディアは、列車の箱ばっかり報道するけど、富裕層を楽しませるなら、サービスがどうなの?ということをしっかり報道してほしいものです。今日の朝ズバで、ラウンジカーで、ピアノとバイオリンの生演奏をしてる映像が流れたけど、なんで、あの人たちも車掌みたいな制服着てるの?たまたまピアノやバイオリンが引ける職員が演奏してるみたいな安っぽいことはしないとは思いますが、まさか本番もあの衣装じゃないでしょうね・・・。などなど、もし弊社のお客に営業してというなら、まだまだ突っ込みどころ満載って感じです。営業してくれと思っていないから、それっきりコンタクトがないのだと思いますが・・。氷河特急で体験する絶景でもなく、ロボスレイルのような車窓から、特別なサファリを体験したり、ワイルドな野生動物が見えるわけでもない。七つ星に乗る理由をもう少し研究してもいいのではないかなと僕は思っています。せっかく、世界に誇れる豪華列車を作ったのだから、日本一周させちゃえばいいのに〜。五能線とか、絶景を売りにしている路線もあるわけだし、日本一周列車で旅しながら、おいしいものを食べ歩くの。区間乗車なんかもありにして、青森までいったら、飛行機で東京に行って、また途中から合流するとか、お金はかかっても、もっとフレキシブルに楽しめる・・なんてなったら、話はまったく別だと思うの。日本1週100日間の旅。これなら、僕も乗ってみたいわ。だって、今回のコースをみると、??って感じなんだけど、この列車に乗って、ななつ星に乗って、九州まわるけど、阿蘇をハイキングしたり、宮崎神宮参拝してみたりなんてしたくないもの。沈壽官窯で絵付け体験とかもあるけど、こういうのが無理矢理感なのよ。小学校の社会科見学じゃないんだから、絵付けってどうなの??
 今回の「ななつ星」に限らず、以前、NHKの記者に取材を受けたときに「国内でインバウンドビジネスに成功している所はどこですか?」と聞かれたんだけど、僕は「ないんじゃない?」と答えました。だって、海外のいろんな観光資源を体験して、それと比較して、そこにわざわざ行ったり、買ったり、食べたりする価値があるかどうかを判断してプロモーションされているのならいいんだけど、殆どがそうじゃないんだもの。以前、四国の某役場の観光担当の課長がうちの事務所にセールスに来たときに、「あなただったら、自分でお金払って、わざわざここに行くんですか〜?あなたがお金を払わないところに、どうして、うちかお客を連れていかなきゃならないのでしょう?」と回答したくらいですから・・。「ななつ星」は、インバウンドを対象とせず、国内のシニア層をターゲットにしていますというのならいいのですが。日本人の富裕層も、最近では、クラブツーリズムさんの富裕層クラブ「ロイヤルグランステージ」などでは、積極的に豪華クルーズやオリエントエクスプレス、インドのマハラジャトレインなどを積極的に販売していますし、おかげで、すでに、世界の豪華列車を体験している日本人も増えてると思うんですよね。話の種に一度は乗るかもしれないけど、世界の豪華客船や寝台列車の旅を経験した人が、ななつ星に満足するのか、ぜひリサーチしてみたいものです。
 富裕層旅行ビジネスって、それぞれの顧客の知識、経験、生活背景なんかを加味して、どんなものを観たり、どんな人に出会ったり、どんな経験をするかを丁寧にプログラムしなきゃならないものなの。豪華なお船に乗せたり、豪華な列車に乗ったからといって、富裕層が満足するものではないのです。目の前にあるものを無理矢理取り入れてプログラムにしても、それは、真のトラベラーには受け入れられないでしょうね。いろいろと生意気いってしまいましが、今回、JR九州に感謝もしています。「時間と空間を楽しむ」ということを商品にし、世に出してくれたことに、深く感謝したいのです。新幹線、飛行機、さらに、近隣海外への弾丸ツアー。安く、時間的効率優先的な感じが否めない昨今、「時間を楽しみましょう。」ということを、日本社会に提案できたと思うんです。形のない時間にお金をかける。これからの豊かさの象徴。確かに、豪華クルーズもあったけど、豪華クルーズは、ちょっと遠い感じがするじゃないですか。3泊4日くらいの列車の旅。そりゃ、海外の列車の旅にくらべれば、まだまだ残念なところもあるかもしれないけど、過ぎ行く景色をみながら、いろんなことに想いを馳せ、共に旅する相手と語らう。たとえ、会話のネタがないシニア夫婦でも心配はない。すぎゆく車窓の景色が、つねにネタを提供してくれるはずですから。「ななつ星」のこれからの進化に期待せずにはいられません。日本における富裕層旅行は、始まったばかり。「ななつ星」が、世界中の人を乗せて、日本中を駆け抜ける日を楽しみにしています。なぜなら、これこそが、世界に誇れる、わざわざ日本にくる目的の一つになると確信しているからです。オリンピックが先か、ななつ星が日本の駆け回る日が先か。


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